犬のお散歩中の「匂いかぎ」は本当に必要?

ドッグトレーナー視点から考える、必要性と注意点
こんにちは。Colors Dog代表の原口です。
日頃、たくさんの飼い主さんから「散歩中の匂いかぎはさせた方がいいの?」「マーキングが増えて困る」といった相談をいただきます。
犬にとって匂いかぎは非常に自然で、本能的な行動のひとつです。けれど、自由にさせすぎるとマーキングの助長につながったり、しつけの面で悪影響を及ぼす可能性もあります。
この記事では、「匂いかぎは必要か?」という問いに対して、ドッグトレーナーの視点で客観的かつ現実的に掘り下げていきます。

目次
- 匂いかぎとは何か?犬にとっての意味
- 匂いかぎのメリット
- 匂いかぎのデメリットとリスク
- マーキングを助長するケースとは?
- 散歩中の匂いかぎ、どう向き合う?
- よくあるQ&A
- 結論:匂いかぎは「必要」だが「管理」が大切
1. 匂いかぎとは何か?犬にとっての意味
犬の嗅覚は人間の数万倍ともいわれ、世界を「匂い」メインで感じています。
散歩中に匂いをかぐのは、以下のような理由からです。
- 他の犬の情報(性別、年齢、健康状態など)を得る
- 周囲の環境変化を把握する
- ストレスを和らげる
- 自然な好奇心・本能的欲求を満たす
- ストレスサインの可能性も
2. 匂いかぎのメリット
適切に匂いかぎを許すことには、以下のようなメリットがあります。
- 知的刺激・精神的満足
- 好奇心が満たされる
- 犬本来の行動の尊重
特に日常の刺激が少ない犬にとって、散歩時の匂いかぎは「脳のエクササイズ」として重要です。
3. 匂いかぎのデメリットとリスク
一方で、匂いかぎには以下のようなリスクもあります。
- マーキング行動の助長
- 散歩のテンポが乱れる(立ち止まりが多い)
- リードを強く引くクセがつく
- 他犬や通行人とのトラブル
- 衛生面・寄生虫や異物のリスク
自由にさせすぎることで、犬が「自分で判断していい」となり、飼い主とも歩調が合わせづらくなります。
4. マーキングを助長するケースとは?
以下のような犬や環境では、匂いかぎがそのままマーキングにつながりやすくなります。
- 不妊手術前の犬(性ホルモンの影響が強く出やすい)
- 縄張り意識が強い性格の犬
- 他の犬の匂いが残る場所(公園入口、電柱など)
- 飼い主が行動を管理しきれていない場合
- ストレスが溜まっている犬
マーキングは犬同士の「においでの会話」であり、匂いをかいだ結果として「ここにも自分のサインを」となることが多いです。
5. 散歩中の匂いかぎ、どう向き合う?
● 自由にさせすぎない
匂いかぎをすべて自由にすると、散歩の主導権が犬に移ってしまいます。
匂いをかぐことは許しても、「タイミング」や「場所」は飼い主が管理しましょう。
● 合図を決める
たとえば「ここではかいでいいよ」という合図を作ると、犬も混乱しません。
● 不妊手術の検討
性ホルモンに起因するマーキングが強い場合、不妊手術で軽減することがあります。
獣医師と相談のうえ、適切なタイミングを見極めましょう。
● 散歩ルートを工夫
匂いが強すぎる場所ばかりだと興奮しすぎることも。住宅街と公園を組み合わせるなど、匂いの「濃淡」にバリエーションを。
● トレーニングの実践の場にする
自宅で行っている「ついて」「待て」などの基礎トレーニングは、実際の外の環境でこそ活かされます。
特に、外の刺激に敏感で興奮しやすかったり、視野が狭くなりがちな子にとっては、 自宅内だけでの練習ではなく、外の環境でも落ち着いて行動できるようになることが非常に大切です。
匂いや音、人や他の犬など様々な刺激の中で練習を積むことで、徐々に視野が広がり、心にゆとりを持てるようになります。
散歩は「ただ歩くだけの時間」ではなく、日常のトレーニングを実践する絶好の機会です。飼い主主導の落ち着いた歩行を心がけ、犬の成長をサポートしていきましょう。

6. よくあるQ&A
Q. Q. 匂いかぎを完全にやめさせたほうがいい?
→ いいえ。ただし、「常に匂いに集中させる」のではなく、犬自身が“匂いをかぐ・前を向く・飼い主を見る”など複数の選択肢を持てるように導くことが大切です。
心にゆとりがある犬は、外の環境でも落ち着いて状況判断ができるようになり、結果的に匂いに過剰に執着しなくなります。
Q. 不妊手術をしてもマーキングは治らない?
→ すべてではありませんが、ホルモン由来の行動は落ち着くことが多いです。学習でついたクセは別途トレーニングが必要です。
Q. 女の子でもマーキングしますか?
→ します。特に縄張り意識が強い性格のメスは、特定の場所にマーキングをすることがあります。
Q. 散歩時間と匂いかぎ、どちらを優先すべき?
→ 両方バランスとメリハリが大事です。時間が短くても質の高い散歩(コントロールされた匂いかぎ含む)ができればOKです。
7. 結論:匂いかぎは「してもいい」だが「管理」が大切
犬にとって匂いかぎはとても大切な行動です。
しかし、「自由にさせすぎること」=「良いこと」ではありません。
ドッグトレーナーとして言えるのは、
匂いかぎは「適度に」「計画的に」「飼い主が主導権を持って」取り入れることがベストということです。
外の散歩は、ただ歩くだけではなく、自宅で行っているしつけを実践する絶好の機会でもあります。
日常の中で、少しずつ「犬の行動を導く力」をつけていきましょう。
この記事が、日々の散歩やしつけの参考になれば幸いです。
犬との生活をもっと楽しく、心地よいものにしていきましょう。