犬の甘噛みについて|予想される原因と対処

大阪市を中心にドッグトレーナー・犬の管理栄養士として活動しているColors Dogの原口です。
今回はご相談の多いテーマ、「犬の甘噛み」についてお話しします。甘噛みは子犬だけの問題と思われがちですが、成犬でも続いているケースは少なくありません。

結論から言うと、甘噛みの対処には「その場を安全にするための直接的な対処」も必要な場面があります。ただし、根本的な解決を目指すなら、なぜ甘噛みが起きているのか(原因)を紐解くことが欠かせません。原因が違えば、最適な対処も変わってきます。

また、「甘噛み」と言っても人にとっては痛いですよね。犬は加減している“つもり”でも、人の皮膚は犬同士よりずっと弱く、痛みやケガにつながることがあります。さらに、甘噛みが常態化すると、興奮した時に加減が効かなくなったり、噛むこと自体が習慣化したりすることもあります。早めに「安全」と「学習」を両立した形で整えていきましょう。


目次

甘噛みの予想される原因(よくあるパターン)

甘噛みは1つの理由だけで起きるとは限りません。複数の要因が重なっていることも多いので、当てはまるものがないかチェックしてみてください。

1)遊びの延長で興奮が上がりすぎている

犬は興奮すると口が出やすくなります。特に、手でじゃらす遊びや、激しい追いかけっこが続くと、噛む行動が混ざりやすいです。
「遊んでいるつもりが噛まれる」「撫でていたら急に口が出る」などは、興奮のコントロールが鍵になります。

2)歯の生え替わり・口の違和感(子犬に多い)

子犬は乳歯から永久歯へ生え替わる時期に、歯ぐきがムズムズして噛む行動が増えやすくなります。
この時期は「噛んではいけない」だけではなく、噛んで良いものを十分に用意することがとても重要です。

3)ストレス・退屈・運動不足(発散不足)

散歩が短い、刺激が少ない、遊びが単調、留守番が長いなどが続くと、行動の出口として噛みが出ることがあります。
特に、頭を使う機会(嗅覚、探索、学習)が少ない犬は、手や服への甘噛みが増えやすい傾向があります。

4)要求行動として学習している(噛むと構ってもらえる)

「甘噛み → 飼い主が声を出す/手が動く/追いかける → 犬は楽しい」
この流れが成立すると、犬は“噛めば反応が返ってくる”と学習します。叱っているつもりでも、犬にとっては構ってもらえた=成功、になっていることもあります。

5)コミュニケーションの噛み(止めて・嫌だ・距離をとって)

触られ方が苦手、抱っこが嫌、眠い時に触られる、子どもが急に手を出すなど、犬が「やめて」のサインとして口を使うことがあります。
この場合、単なるしつけではなく、犬の苦手や環境調整が必要です。

6)体調不良・痛みが関係している

関節や腰、皮膚、耳、口内など、触られた時に痛みがあると噛みが出ることがあります。急に噛むようになった、触ると嫌がる、寝起きに多いなどの場合は、念のため体のチェックもおすすめです。


「要求を叶える咬み」と「自分の身を守ろうとする咬み」は別物

同じ“口が出る”でも、理由が違えば対応は変わります。ここを分けて考えるだけで、対処の方向性がブレにくくなります。

要求を叶える咬み(要求咬み)

犬の中で
「咬む → 人が反応する(声を出す/手が動く/構ってくれる/要求が通る)→ 成功」
という学習ができている状態です。ポイントは、叱っているつもりでも犬にとっては「反応が返ってきた=ごほうび」になり得ること。

例:遊んでほしい、抱っこしてほしい、ごはんが欲しい、散歩に行きたい、注目してほしい
方向性:咬まなくても叶うルール作り(落ち着いた行動で要求が通る/咬んだらいったん楽しいことが止まる)

自分の身を守ろうとする咬み(防衛・拒否の咬み)

犬が「怖い」「痛い」「やめて」「近づかないで」と感じたときの、距離を作るための行動です。
このタイプは、要求咬みのように「無視で解決」ではなく、嫌な原因の特定と環境調整・段階練習が必要になります。

例:抱っこが嫌、触られるのが苦手、寝ている時に触られる、子どもが急に手を出す、口や体の痛みがある
方向性:“咬ませない状況づくり”+慣らし(段階練習)+体のチェック(急に増えた場合は受診も視野)


直接的な対処(まず安全にするために)

原因を探りつつも、「今、噛まれて困っている」状況には即対応が必要です。ここでは“その場を悪化させない”ための基本をまとめます。

●手を引かない(引くと追いかけて噛みやすい)

噛まれた瞬間に反射で手を引くと、犬は「動くものを追う」本能でさらに噛みやすくなります。可能なら、手をサッと引くのではなく、動きを止めて落ち着かせます。

●反応しすぎない(大声・叱責・追いかけは逆効果になりやすい)

大きな声やバタバタした動きは、興奮を上げることがあります。淡々と、静かに対応する方が改善しやすいです。

●“噛めるもの”に切り替える(代替行動)

噛んで良いおもちゃや安全な噛むアイテムを用意し、噛む対象を切り替えます。
「噛むな」ではなく「これを噛もう」を教えるイメージです。

●遊びを中断する(噛んだら楽しいことが止まる)

遊び中の甘噛みは、噛んだ瞬間にスッと遊びを止め、数秒〜短時間だけ距離を取ります。
ポイントは、長時間の無視ではなく“すぐ戻れる短い中断”にすること。犬が理解しやすくなります。

●環境を整える(噛ませない工夫)

※一番大事

噛んでしまう状況を繰り返すほど、行動は強化されます。まずは噛ませない環境をつくることが最短ルートになる場合も多いです。
例:手にじゃれつく前に噛むおもちゃを渡す/興奮しやすい時間帯はサークルやクレートでクールダウン/噛みやすい物(布・スリッパ等)を片付ける


原因を紐解く対処(根本解決のために)

直接的な対処は「火消し」。根本解決は「火種を減らす」ことです。原因別に考えると、やるべきことが整理できます。

1)興奮しやすい子:落ち着く練習を増やす

・遊びを短く区切る(1〜2分で小休憩)我慢する練習も行う。
・興奮が上がり切る前に休憩を入れる(上がってから止めると難易度が上がります)
・静かな合図で切り替える(オスワリより「離れる」「マットで休む」などの方が合う子もいます)

2)歯のムズムズ:噛む欲求を満たす設計に

・硬すぎない安全な噛むアイテムを複数用意
・噛む行動が増える時間帯(夕方など)に先回りして渡す
・手ではなく、噛む対象へ誘導する習慣をつくる

3)発散不足:散歩+脳の運動(嗅覚)を増やす

運動量だけでなく、嗅ぐ・探す・考えるが入ると落ち着きやすいです。
・匂いを嗅ぐ時間を多めに(散歩で立ち止まってOK)
・ノーズワーク、知育トイ、簡単なトリック練習
・フードの与え方を工夫(早食い防止や探索型に)

4)要求咬み:咬まなくても要求が通る仕組みに変える

・咬む前に出るサイン(うろうろ、見つめる等)を見逃さず、落ち着いた行動で叶える
・「座って待てたら叶う」などルール化する
・咬んだ時だけは反応が薄く、落ち着いた時は反応が返るようにする(成功体験を作り直す)

5)防衛・拒否の咬み:原因を避け、段階的に慣らす

・犬が嫌がるタイミング(寝ている、食事中、休んでいる)を避ける
・触る練習は短く、良い印象を積み重ねて段階的に(無理に進めない)
・子どもがいる家庭は、犬に逃げ場(クレート等)を作る
・急に増えた、触ると痛がる、体を気にするなどがあれば動物病院の受診も検討する


まとめ:直接の対処+原因へのアプローチで変わります

甘噛みは「ただ叱れば止まる」ものではなく、犬側の理由が必ずあります。
その場の安全を守るための直接的な対処は大切ですが、原因を見立てて生活や関わり方を変えることで、解決スピードも再発率も大きく変わります。

「うちの子はどの原因が強いのか分からない」「やっているけど良くならない」など、見立てが難しい時は、行動が出る場面・時間帯・直前の出来事(散歩後?来客時?寝起き?遊びの途中?)を整理するだけでもヒントになります。

Colors Dogでは、犬の行動面(トレーニング)だけでなく、食事や生活設計も含めて、その子に合う形を一緒に考えていきます。気になる方はお気軽にご相談ください。

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